丕緒の鳥|十二国記【読書感想・書評】

今回は十二国記シリーズの第5巻!

『丕緒の鳥』を読んでみました。

この小説は短編集となっており、全四編を収録しています。

表題は「丕緒の鳥」「落照の獄」「青条の蘭」「風信」となっています。

この四編は陽子を中心に物語が進んでいった長編とは打って変わって、下級官史と国民について描かれている作品となっています。

時間軸で考えると、ちょうど陽子が慶国の王座につく前の話となっています。

では紹介に移ります。

丕緒の鳥

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本の概要

この本は小野不由美さんの代表作、十二国記シリーズの第5作目となる小説です。

この作品は異世界を舞台にしたファンタジー小説となります。

本作は、長編作品の主人公である陽子が慶国の王座につく以前の話となっており、下級官史と国民の姿を描いています。

短編小説であるため、読みやすい形式となっているのが特徴です。

そのため長編作品の方を読んでいない方にも、楽しめる作品になっているかと思います。

まだ長編作品を読んでいない方は、前作品の記事を挙げていますので参考にしてもらえると嬉しいです。

あらすじ

「絶望」から「希望」を信じた男がいた。慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる「たいしや大射」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒(ひしょ)は、国の理想を表す任の重さに苦慮する。希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうか──表題作「丕緒の鳥」ほか、己の役割を全うすべく、走り煩悶する、名も無き男たちの清廉なる生き様を描く短編4編を収録

出典:Amazon 丕緒の鳥の内容紹介より

まず、本書は短編四編を収録しているのでそれぞれ紹介していきます。

丕緒の鳥

舞台は慶国。

丕緒(ひしょ)は式典のための陶鵲(とうしゃく)を作る官として、四代前の王から仕えているものです。

式典では大射(たいしゃ)と呼ばれる儀式で的である陶鵲を射ることにより、王が即位したことを祝います。

いわゆる祝い事や賓客があったときに祭礼の儀式として行われていた儀式です。

その射られた時の音は前王に褒められるほど素晴らしいものでした。

そんな素晴らしい技術を持つ丕緒は、大射を務めた友が悧王(りおう)によって理不尽に処刑され、少し後に悧王は斃れます。

そして慶国の国民が苦しんでいるのを知り、国民に見立てて射られた陶鵲が酷く悲しく散るように作った際には、前王である予王に思いが伝わらず、その予王の政により妻の行方が分からなくなります。

そのような経緯もあり、陶鵲を作る気持ちを失ってしまいます。

時代は過ぎ去り、慶国に新王が即位することになります・・・

落照の獄

舞台は柳。

司法を司る官の瑛庚(えいこう)は重犯罪を裁く裁判長のような役職の人です。

そんな瑛庚は凶悪な犯罪者の処遇に頭を悩ませていました。

その名を狩獺(しゅだつ)といい、駿良(しゅんりょう)という8歳の少年を酒を飲みたかっただけにお金を奪い殺した男です。

その他にも多くの悪さをしており、罪の数16件、23人を殺した殺人鬼です。

今の日本であれば死刑が即決のような気もしますが瑛庚は違いました。

国民は殺刑を望む中、主上は死刑を用いるべきでないとしていました。

さらに、柳は100年以上も殺刑をしておらず、今回の狩獺の殺刑を許せば殺刑を行うことが容易くなってしまうことを恐れます。

そして柳の王は狩獺の刑罰については狩獺に丸投げし、全ての決定権は瑛庚に託されたのです。

瑛庚は狩獺をどのように裁くのでしょうか・・・

青条の蘭

下級官史の標中(ひょうちゅう)は友人の包荒(ほうこう)と共にある問題に挑みます。

それは10年以上前、故郷の山に生えている山毛欅(ぶな)が変色したものを見つけます。

そのころは問題視していなかった標中は、2年ぶりに包荒と出会い現実を知ります。

それは「変色した山毛欅林が数を増している」ということでした。

山毛欅が変色すると石化したようになり、国民にとって使用用途が増えるため喜ばしいことと思っていた標中ですが、包荒の話を聞き危機感を抱きます。

そして標中と包荒は疫病を直す特効薬を探し出すのです・・・

風信

蓮花(れんか)は15の夜、空行師(くうこうし)によって故郷の村を焼かれ家族を殺されてしまいます。

家族をなくし、友達を失った蓮花は下働きとして雇ってもらうことになります。

そこで嘉慶(かけい)に出会うことになります。

嘉慶は季節変化を観測し、暦を作ることを仕事にしていました。

そんな嘉慶ですが、国民が苦しんでいる中で無関心すぎる様子を見ていた蓮花は憤りを覚えます。

それでも嘉慶は暦を作る続けます。

その理由とは・・・?

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感想

今回は短編集ということでスラスラ読むことができました。

長編作品とは違い、国民視点で書かれているので考えさせられる点がいくつかありました。

特に『落照の獄』は刑罰について深く考えさせられました。

現在の裁判員制度は日本に住んでいる市民から無作為に選ばれた人が裁判員として裁判官と共に裁判を行うことになるので、私も選ばれる可能性があるわけです。

そしたら自分だったらどう対処するんだろ・・・と思うと頭を抱えそうです。

死刑とはどういった存在なんでしょうか?

もう一度考えるべきですね。

また、他の3作も読み応えバッチリでした。

国と人との関わりについて深くまで考察されており、十二国記の世界に浸れました。

そして官史や国民のことを知れる作品です。

十二国記を読んだことがない方にも楽しめる小説でした。

まとめ

今回は『丕緒の鳥』を読んでみましたが、短編集なのに内容が濃い!

私はこんな人にオススメしたいです。

  1. 十二国記を読んだことがない方
  2. シリーズものを読みたい方
  3. 続きが気になってしまった方

では、6巻を読みに十二国記の世界へ・・・


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